教育実習日誌〜先生と生徒の間〜

早速開けて飲んでいたら。


「きっとその子・・・・・・美羽ちゃんだっけ?

お父さんには会いたくないだろうから、今日も念のため遅く帰ることにするよ。

菫は精一杯、自分がやらなきゃならないことを頑張りなさい」


「うん。ありがと」


お父さんにまで気を遣わせちゃって、ちょっと申し訳ないけれど。


今は家族の存在が、本当にありがたかった。





美羽ちゃんとお母さんが病院へ行き、今日のお姉ちゃんは自分の家で家族サービス。


一人で家にいられる今のうちに、できるだけ指導案作りを進めなくちゃって思うのに、つい別のことを考えてしまう。


憔悴しきって、今朝もほとんど何も食べられなかった美羽ちゃん。


当然だよね。これから、産婦人科で現実を突きつけられちゃうんだもの。


美羽ちゃんの気持ちを考えたら、家族を捨てて自分勝手に詩を作って虎になっちゃった男の話を読んでも、何にも同情できなかった。


この話だってそう。


いつも泣くのは女と子どもなんだから。


「山月記」に八つ当たりしても仕方がないのはわかってるけどさ。

< 102 / 290 >

この作品をシェア

pagetop