教育実習日誌〜先生と生徒の間〜

「吉川から聞いたよ。

高校はいつでもやり直せるからと言って、お腹の子を選んだんだもんな。

だから、俺にできることはあとこれだけだ」


さらにカバンから、いくつかの大きな封筒を取り出した。


「通信制高校のパンフレットだ。

木内の場合、高校入学からまだ2か月しか経っていないから、残念ながらうちの高校の単位は認定されない。

通信制高校で1からやり直すことになってしまうけれど、それでもチャレンジしてみる価値はあると思う。

通信制なら、ご家族に協力してもらえたら、続けることは可能だ。

昔でいうところの『大検』を受けるっていう手ももちろんある。

それから、大学だって通信制はいっぱいある。

赤ちゃんのせいであきらめたって思わないで欲しい。

そう思ってしまうことは、生まれてくる子どもに対しても失礼だろ?

子どもも勉強も諦めない方法を、吉川と一緒にこれから探してくれることが、担任としての俺の願いだ」



それから。


退学届けに判をもらい、お母さんとまた話をした。


なんと、退院したら木内はそのまま吉川の実家へ行くことになったらしい。


吉川のお父さんが


『うちで責任を持って、出産と子育ての援助をしますから』


と言ったそうだ。


吉川、お前の親父さん、よほど責任を痛感してるんだろうな……。


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