教育実習日誌〜先生と生徒の間〜

「松本先生のような独身男性にご理解頂くことは難しいかも知れません。

でも、一番理解が得られないのは、子どもをすんなり授かった女性から、ですね」


「え?」


「結婚して10年、最初の5年はずっと言われ続けましたよ。

『子どもはまだ?』

『早く産んだ方がいいわよ』

『夫婦二人だけなんて老後が寂しい』ってね。

なかなか授かることができないって言うのが嫌で、あいまいな返事をしていたら今度は、

『子どもが嫌いなの?』

『自分の子どもって本当に可愛いのよ』なんて言われて。

不妊治療を始めてからも、ずっとそれを隠していたから、私って本当に嫌な女だったと思うんです。

治療が最優先だったので、仕事は最低限しかしない。

教員なのに、子どもが嫌いだと思われている。

いつもストレスでピリピリしていて、本当に近寄りがたかったんじゃないですか?」



そう言って、無理に口角を上げようとしている岡崎先生が、その時初めて痛々しく思えた。



「私も岡崎先生のことは、この2か月弱しか拝見しておりませんので、本当に表面的なことしかわかりません。

正直なところ、岩谷先生の実習がどうなるのか、それは気がかりでした。

何か事情がおありだとは思いましたが、私が介入すべきではないと考えていたんです。

……うちのおせっかい実習生に頼まれるまでは」



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