教育実習日誌〜先生と生徒の間〜

「だからこそ私が何とかできるのであれば、何としてもその妊娠を継続させたかったんです。

息子も美羽さんも、育てたいという希望があった。

そのための環境は整えられるという自負もありました。

……罪滅ぼしのつもり、なのかも知れません。

今までしてきた事と、息子に何一つ大事なことを教えなかった私ができる、最善の選択だと思っていますから」



吉川の親父さんの表情が、穏やかな微笑みに変わった。


おそらく、相当苦しみながら導いた結論だったはずだ。


命を生み出す産婦人科医の誇りと、祖父として孫の命を守ろうと考えたのだろう。


この親父さんを見て育つのだから、吉川はもっと人間的に成長できるはず。


そして木内も、心穏やかに過ごして良い母親になれるはず。


この一家の幸せを願わずにはいられなかった。



シルバーメタリックのボルボに乗って、吉川の親父さんと木内は行ってしまった。


後に残された吉川を下宿まで送っていく車の中で、苦言を呈した。



「俺より先に父親になるんだから、当然俺より勉強しろよ。

可愛い教え子を手籠めにしたんだから、一生大事にしないと許さない。

今のお前にできるのは、志望校に合格して、親父さんと木内を安心させてやることだ。

政経の講習、真面目に受けろよ」


「はい!」


気持ちのいい返事を聞いて、今日は美味い酒が飲めそうだと思ったが……。


REXのことをすっかり忘れていた事に気づいた。


どうするべきか……。

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