教育実習日誌〜先生と生徒の間〜

家族


それから……。


先輩が両方の実家に電話をかけてくれた。


きっと私のお父さんから、相当きついことを言われたはず。


でも、先輩は詳しい話をしなかった。


私にこれ以上心配事を増やさないためだと思った。



「明日、うちの両親とミウの両親がここに来るから。

そのときまた、きちんと話すよ。

今の俺にできるのは、それしかないから……」



私は、先輩の言葉を信じることしかできなかった。




次の日。


午前中にお母さんが来てくれた。


お母さんは私の顔を見るなり、泣きだした。



「こんなに心配させて……」



素直に、ごめんなさいと謝りながら、私もまた泣いた。


いつも綺麗なお母さんが、お化粧もろくにしないで、疲れきった顔をしている。


そんなに心配してくれていたなんて。


私なんて居てもいなくてもいい存在だと思っていたのに。


お母さんに抱きしめられて、こうやって泣くのって何年ぶりだろう。


私は甘えるのが下手な子どもだったから。


私より、お兄ちゃんが可愛いんだと思っていたもの。


でもそれは、違っていたのかもしれない。


自分が産んだ子どもなら、絶対に無条件で可愛い。


私はまだ逢ったことのない、お腹の赤ちゃんが愛しくてしょうがないから。


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