ギブ・ミー・ヘブン
引きずられながら、着いた先はとあるビル。
エレベーターが止まると別世界の空間が広がって、螺旋階段を昇りきるとあっという間に彼のお店に着いてしまった。

「お客様ご来店です!」

彼が急に大きな声を出すと、

「いらっしゃいませ〜」

大音量の音楽とともに、男の子たちの威勢のいい声。


「絶対楽しいから」
笑いながら席へ案内すると名刺を差し出してきた。


「はじめまして。嵐です。」

いかにもお金の掛かっていそうなデザイン名刺。
紙じゃなくプラスチックでできていた。
まるで何処かの会員証のような。
貧乏ホストじゃ作れなさそうだと思った。


「何飲む?」

そう訊かれても何があるのか知らないし、ウィスキーしか飲まない私は焼酎やビールは苦手だった。

「ウィスキーやブランデーはある?」

初回メニューでないならお茶でも飲もうかと思っていたが

「あるよ」

そう言ってV・S・O・Pのボトルを出してきた。


「乾杯」

グラスを渡されて乾杯すると

「ちょっと失礼。」


彼は席を立った。



席の周りを見渡すと、ニュークラやキャバクラ、あるいは風俗の女の子なのだろうか。
飾りボトルを並べてシャンパンを飲む女の子や、ホストに絡んでいる女の子。

皆それぞれかわいいし、そんなに男に相手にされないような女の子でもないのに何故こんなところに通うのかと不思議だった。


「こんばんは、お席ご一緒してもよろしいですか。」

彼とは違うホストがやってきた。

「嵐さんの親しい方ですか?始めまして蓮です。」
名刺を差し出しながら彼は私にそう訊くので、

「キャッチされただけ」

そう答えてグラスの酒を飲む。
間髪入れずに

「マジですか?」

と私の顔をじろじろ見るので

「なんで?」

と訊きかえす。

「嵐さんはここのナンバー1で、キャッチしなくても新規がバンバンやってくるほどススキノでは有名なホストなんですよ。雑誌で見たことないですか?」

驚いた顔でそのホストは私に語りかける。

「知らないし、無理矢理引きずられて来ただけだよ。」

蓮くんはますます驚いているようだった。
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