かくれんぼ
ブーッブーッ
珍しく携帯が鳴る。
いつもの出会い系かなんて思っていたら
「今日の夕方帰るから。蒼」

鼓動が早くなる。
どれだけこの日を待ち望んだだろう。

「蒼・・・蒼が帰ってくる!!!」

蒼は三年前までわたしの隣に住んでいた男の子で小さいときから家族ぐるみの付き合いだった。
でも親の転勤だかなんだかで遠いところに引っ越したきり音信不通だった。

「蒼ってどこ行ってたんだっけーアメリカ・・・じゃないし、イギリス・・・」

ズンっと頭に何かを打ち付けられた感覚に襲われる。
今でも時々やってくる得体の知れない痛み。
蒼と離れるまでは、わたしは明るくて天真爛漫で毎日が輝いて見えていた。

大好きだった蒼がいなくなって得体の知れない頭痛と過呼吸に襲われるようになった。最初は心配していた友達も頻繁に倒れたり真っ青になるわたしが面倒臭くなったのか徐々に離れていった。
蒼がいれば・・・何度そう思ったかわからない。
自分でも幼なじみと離れ離れになっただけでこんなに人は変わるものかと思った。
でもきっとそれは蒼がただの幼なじみではなく、わたしにとってなくてはならない存在だったからだと気づいたのはごく最近のことだ。
そう気づくまで自分がひどく弱くて情けない存在に思えてわたしはどんどん世間と隔絶していった。
そしていつしか家にいても、学校にいても、街にいても自分の居場所を見つけられなくなった。
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