忘れない、温もりを

2人

道の先に
地下道の入り口が光ってる。

あたしの手を握った仁が肩で大きく息をしたのがみえた。


「着いちゃった…ね?」

表現しづらい微妙なキモチの中であたしは

必死だった。

この手を離したらどうなるんだろう。



今日知り合ったばかりの人に何故、こんな気持ちになるんだろう。

胸がモヤモヤする…



「ねえ…仁?」

振り返った仁は口をつぐんで、目元に笑みを浮かべていた。


一度

目を伏せると



彼の足は裏路地に進んだ。


背中に冷たいコンクリートを感じた。

仁は身体1つ分空けて
あたしの前に立っていた。



「仁?なんか言ってよ…」
鼻の奥がツーンとした。
目が水分で揺らぐ。



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