忘れない、温もりを
どうしよう。



可愛い…


僕の足はいつの間にか
僕らを薄暗い路地裏、

というかビルの間に運んでいた。



コンクリートの壁を背にした彼女と、
すぐ目の前に立つ僕。


あと一歩踏み出してしまえば、
小さい彼女を

この胸で押しつぶしてしまえただろう。



「仁?なんか言ってよ…」
涙を滲ませて言った
彼女の声は

割れていた。




大きく深呼吸して
彼女を見た。


ひなは
不安げな顔で

一直線に僕を見つめていた。




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