ストロベリーフィールド
帰りのバスの中、私は顔を上げることが出来なかった。


和希もいつもは見せない、真剣な顔つきで窓の外へ視線を向けている。



翔は一体、どこに行ってしまったんだろう…。

実可子さんの所へ行けば、何かわかるような気がしていた。

もう一度、翔に会えるんじゃないかと、期待していた。


私にとっては、実可子さんが最後の希望だったのに…。




家までの道のりを、二人でゆっくりと歩いた。


とっくに陽は暮れて、街灯が薄暗く道を照らしている。



和希はポケットに手を突っ込んだまま、不機嫌な様子で私の一歩手前を歩いてる。


和希との間に流れる静かな時間を
こんなにも苦痛に感じたのは、この日が初めてだった。


「なぁ、彩。 あいつは多分、もう戻ってこねーぞ」


わかってる。
そんなことわかってるよ。
本当は、翔が姿を消したあの日から
ずっと感じてた。


もう二度と、翔には会えない。



私のそんな気持ちを察したように、和希は声のトーンを少し上げた。


「元に戻っただけじゃねーか、翔と出会う前に。 ちょっと前まで俺ら二人だったじゃん」


そう…ちょっと前に戻っただけ。

だけど…


「翔が居なかった頃になんて…戻れないよ」


涙がポロポロと溢れた。

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