ストロベリーフィールド
「とうとう、卒業しちゃったね」


「この校舎ともオサラバだ!」


教室の真ん中で和希が叫んだ。


「ちょっと寂しいかも」


「ちょっとじゃねぇだろ。 式でボロボロ泣いてたくせに」


「和希は寂しくないの!?」


「俺は怒られた記憶しかねぇから!」


「あぁ、遅刻の常習犯だったもんね」


「彩なんて無断欠席ばっかじゃねぇか。 来ないよりマシだろぉが」


「そのてん、翔は真面目に来てたよね」


「アイツ、勉強も出来たしな。 俺らと同じように遊んでて、なんでアイツだけ成績よかったんだ?」


「そりゃ、和希の頭の中が空っぽに近いからじゃない?」


「はぁ? 俺の頭ん中はぎっしり詰まってんだ! 彩と一緒にすんな」


翔がこの場にいたらきっと、こんなバカな話で盛り上がってる私たちを
涼しい顔して微笑みながら眺めてるんだろうな、なんて思った。



「そろそろ帰るか」


「そうだね」


廊下に出たところで、教室を眺めた。


翔と出会ったあの日の光景が、鮮明に思い出された。


「置いてくぞ」


すでに階段を降りようとしていた、和希の元へ走った。

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