天使と野獣
情報… そんなことは頼んではいない。
それは警察の仕事だ。
確かに、担任も話していたように、受験期の三年生、
近くに人が落ちて死んだ、と言う割には落ち着いている。
神頼み、とか、ゲンを担ぐようなタイプなら…
近くに人が落ちてくれば、それだけで悪いイメージを持つだろう。
しかし、この少年には、そんな動揺は無さそうだ。
そう思った二人は… 何故か慎重な顔つきになり、
一人がポケットから紙に包まれた
黄色い粉末状のモノを見せた。
「君、これが何だか分るか。」
京介はそれを真面目な顔をしてじっと見つめていたが…
「ちょっと舐めても良いか。」
そう言って京介は、返事を待たずに
人差し指をちょっと舐め、粉に手を伸ばし、
指先についた微量な粉を口に運んでいる。
その様子は、まさに麻薬捜査に関っている
Gメンにでもなったような雰囲気だ。
栄が危惧していたのも、こういう京介の行動だ。
「ひょっとしてこれがチーズと呼ばれているものか。
噂に聞いた事がある。
ヘロインと頭痛薬のタイレノールを混ぜて作っているのだろ。」
その言葉に刑事達は驚いたような顔をして京介を見ている。
混合物まで指摘するとは…
すぐに不審者を見る目つきに変わった。
同席している高木も京介の言葉に驚き、
どう対処したのか分からなくなり、
戸惑ったような顔をして京介を見ている。
そんな言葉を警察の前で出せば…
関わっているように思われてしまうだろう。
普通の高校生は、いや、教師でも…
そんな言葉は知らない。