天使と野獣

クラスメート達は全くの性善説の人、

自分たちのひそひそ話が
京介をその場に居辛くしたと後悔している。


京介の心の中を知ればどんな顔をするか… 

とにかく今、クラスメート達は京介の事を心配しているのだ。



そして、その京介は… 
昼休みに確認した二人、

外岡と桜木の後を100メートル以上離れて歩いている。

そうなのだ。

京介が教室にいたのは二人が下校するのを待っていただけ、

三年生の教室は一階だから見張りにも、
すぐ動くのにも、好都合だったのだ。


今まさに、京介は獲物を狙う猛獣のように、
気配を消してピッタリと後を付けている。


二人は何事も無いようにマンション群の立ち並ぶ一角へと入り、
それぞれの家へと入って行った。


そうか、制服姿では目立つ、
動きを見せるとしたら塾へ行く時だ。

そう思った京介は自分も急いで家に戻り、
私服に着替えてまた張り込みを始めた。



一月の黄昏時… 瞬く間に日が落ち、
辺りは一面に暗がりの世界となっている。

京介は寒さをものとせず、
マンション群の中央に出来ている、公園のブランコに据わっている。


途中で買ったハンバーガーとフライドポテトを持ち、

栄に連絡を入れている。

何をしようと、父に心配をかけることは想定外だ。



「父さん、俺、今忙しいから夕食には戻れない。
父さん一人で適当にやってくれ。」


「どうした。珍しいではないか。
まあいい、飯は残しておくから好きな時に食べろ。
あまり無茶をするなよ。」



そのあっさりとした会話、
わけが分っているのか、いないのか、 

栄はそう言って電話を切った。

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