天使と野獣

二時間ぐらい歩き回ったが何の手がかりも見つからず、
佐伯のところに入る報告も進展は無かった。

が、その時京介の五感が何かに反応した。


まだ七時前だが、
大通りをはずれると辺りはすっかり暗闇の世界、
ネオン輝く大通りからはまるで別世界。

二人はそんな裏通りに来ていた。


そしてそこにある建設中の工事現場、

京介はそこからなにやら金属音が聞こえたように感じた。


京介に透視能力は無いが、

わずかな異変に反応する能力は人一倍だった。



「警部さん、俺、この中を調べて来ます。
あそこに地下室へ降りる階段が見えるから行ってみます。」


「そうか、じゃあ私も行こう。」



と、二人が階段を降り始めた時だった。

背後に人の気配を感じた京介が振り返ると、
男が二人立っていた。

京介はその気配に殺気を感じたが、

佐伯は馴れ馴れしい態度で笑みを浮かべた。



「佐伯警部、こんな所で何をしているのですか。」



男の一人も笑みを浮かべながら話しかけて来た。

二人とも30代の目つきの鋭い男だ。



「しっ、今探索中だから声を落としてくれ。
東条君、この二人は捜査五課の木原刑事と吉田刑事だよ。

やはり君達も違法ドラッグの捜査かね。」



捜査五課と言えば組織犯罪対策や
薬物事件専門の部署だ。

やはりチーズの捜査か… 
と誰もが思った。が… 



「東条、騙されるな。
そいつが黒幕だ。」



四人が階段を降り切ると、
そこから弱々しいが望月の必死な声がした。



「望月… 」

< 99 / 171 >

この作品をシェア

pagetop