蜜に恋して




家がお隣りで、幼稚園から小学校、中学校そして高校と、
人生のほとんどを共に歩んできた男がいる。


幼い頃には恋心を抱いたことだってあったその男、香椎 陸(かしい りく)は、
今では口喧嘩ばかりするものの、大切な友達。だった、と付け足すべきだろうか。


中三から高校に上がるにかけてグンと背が伸びた陸は、いままで以上にかっこよくなって、いわゆる校内のモテ男と化した。

入学当初は一緒に登校して一緒に下校して、陸を振り返り見る女子の多さにびっくりしていたものだ。
高校二年になった時には、陸の人気はお墨付きでそれがあたかも当たり前のような光景になっていたが、
気づけば陸と一緒にいることはほとんど無くなっていた。


理由は簡単で、陸には彼女が出来たから。



あの時は、陸が彼女作るの初めてだったからびっくりだったけど
今思えばそれまでいなかったことの方が不思議だったと感じる。



それ以来なんだかお互い距離を置いてしまったのが高一の夏の始まる頃のお話。


ま、家族付き合いもあったし、
本当にふつーの友達って感じになった。
それまでが一緒に居すぎたんだよって、友達に言われて納得した。



私、間宮 蜜(まみや みつ)は
陸とはただの幼なじみであって、
それ以上でもそれ以下でもなかったのである。

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