Love Slave
「え?で、でもこれから生徒会の公務が・・・・」


「まだ時間あるし、平気だよ。ちょっと回るだけ」


スキップのような足取りで犬の散歩をする。
能天気だな、副会長は・・・・。確かに公務まで時間はある。


(でも会長は遅刻にうるさいしなぁ・・・・)


「ほら、行こうよ」


悩んだ顔をしていることは自分でも分かる。なのに、副会長は気にもせずに手招きしている。
その笑顔は、憎めない。邪気もない、無邪気な子供のよう。


私の意志は会長に向けてではなく、副会長に向けている。だから、金魚のフンみたいに彼の後を追ってしまった。
そして、彼の歩調に合わせて速くする。背から肩に移動する。
副会長は私に気を遣ってか、歩調を緩やかしてくれた


「家にペットいるの?」


「いないんですよ~。飼ってみたいんですけど、親がダメって・・・・」


「まぁ、大変だからね」


空に太陽が雲の間から顔を出す。最近はずっと雨ばかりだったので、青い空を見るのは久しぶりだった。


「あの、ヴィル君って何歳なんですか?」


「うーんと、7ケ月かな」


「7ケ月でそんなに大きいんですか!?」


「大型犬だからね。リード、持ってみない?」


そう言ってリードを渡してくれた。輪っかに手を通した時、ぐいぐいと力強く身体が引きずられていく。両腕で引っ張るが、犬のほうがはるかに強い。綱引きで負けている状態。
まだ子供とはいえ、侮っていた。これでは散歩をするではなく、散歩させられてしまっている。


「すごい力でしょ?連日の雨でストレスが溜まってるんだ。運動量が必要な犬だからね」


すぐにリードは副会長に回った。この散歩を毎日欠かさずやるなんて、犬を飼うのも大変だなと心底思った。


「学園内で飼ってるんですか?」


「ううん、毎日連れて来てるの。ほとんど吠えないから用務員さんから「犬いたの?」って言われちゃった」


犬を学校に連れてくるなんて、生徒会の特権なんだな。普通だったら考えられない。


「ねぇ、『撫子』ちゃん」
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