~天に背いて~<~天に送る風~第二部>
第十二章 冥府への門

「王子、ボクはあのようなマグヌス宰相殿は見ていられません」


 山の道行きは二度目だった。

 軍馬に乗った王子が、アレキサンドラと同じように、事実のありかたに苦しんで、気に病んで、自分が倒れそうに言った。


「こんなにマグヌムの死が、彼を追い込んでしまうとは思いもしなかった。哀れな。いや、私が悪かった……」

 寒い、と身を縮めて王子が思い出すのはマントから突き出されたこと。人肌で暖めてくれた女性は二人目だった。

 一人目は母。だから事実上、彼が身体で触れたことのある女性は母を除いてアレキサンドラが初めてということになる。
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