~天は赦さる~<~天へ送る風~完結編>
 歓喜で鳴いた。怨嗟でなく。

 アレキサンドラの心の中で子供が成長するのがわかった。

 彼女の悪魔は浄化され、赤子らしく産声を挙げた。

 ほえっほえっほえっ、くすん、ぐすん、しくしく……だんだん、子供らしくなってゆく。

 アレキサンドラの胸の中で、薄ぼんやりと彼は透けて見えた。

 ふわふわの金髪の紅顔の美少年だ。

 両眼を拳で覆っており、瞳は何色かわからない。


「可愛い坊や、お眠りなさい、心安く」


 涙の女性が歌いかけると、赤子だった子供はカッと目を光らせ、


「そんなわけに行くか。私は呪う。崖からたたき落とした父を。母を。復讐の怨嗟はまだ終わったわけではない。私は強くなる。この娘の中でな。のろいの快美に浸らせてやりながら」
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