勿忘草
「あんたの家族が捜してるかもしれない」
普通なら彼女の家族が行方不明などで捜索願を出しているはずだ。
どちらにせよ、警察が力になってくれる。
そう思った。
彼女は寂しそうな顔をする。
「そんな顔すんな。きっと記憶も元に戻る」
そう言ってわしゃわしゃと、彼女の髪をくしゃくしゃにする。
「……。」
けれど彼女は何も言わない。
俺はふぅとため息を一つ吐き、
彼女から少し離れ言った。
「じゃあな…楽しかったよ。ありがとな。…シオン」
すると彼女はとても…
驚いたように目を見開く。
それはきっと俺が彼女の名前を呼んだから。
俺は彼女に逢って一度も彼女の名前を呼んでいなかった。
最初に呼んだのは心音の名前だから。
なんだか《しおん》という名前を呼ぶのに抵抗があった。
でも最後くらい…そう思った。
そしてやっぱり呼んでみてわかった。
やっぱり彼女にはシオンって名前がピッタリだ。