CREAMSODA
恐怖
− 赤木病院 −

「叔母さん、なんで教えてくれなかったの」

「久美子(紗耶の母)が、知ったら怒られるわよ」

「いいの!」

「紗耶ちゃんだって、心臓の病気がまだ直っていないんだから、それなのに歩行者天国で踊ってるなんて、何かあったって叔母さん知らないわよ!」

「ねえ、裕也さんは何処?」

「全くこの娘ったら!
外科の302号室よ。」

「叔母さんありがとう!
お母さんには、内緒ね!」

紗耶が病室に行くと、裕也は外を見つめてぼんやりしている。

「裕也!大丈夫」

「紗耶か」

気のない返事だ。

「転倒したって本当?」

「ああ!」

つっけんどんに答える裕也に紗耶は少し不満顔だ。

あの時は一生懸命、夢を話してくれたのに。
紗耶はそう思いつつも、裕也にいろいろな事を話しかける。

ケガの事・学校の事・ホコテンの事・この間の夜の事などを懸命に話す。

その健気な姿を見た裕也は、自分の思いを紗耶に話し始める。

「バイクが怖くなったよ、今までこんな事なかったのに・・・」

「でもバイクが好きなんでしょう、産声をあげたばかりの風が好きなんでしょう。
だったらいいじゃない、その気持ちだけで。
その方が楽しいんだから、私が応援する!私が裕也の走りを見ているから!
楽しく走っていたら、新しい風に又きっと出会えるとわ。」

裕也は紗耶の言葉を聞いていて、気が楽になったのか
少しだけ笑みを浮かべる。

「紗耶って不思議な奴だな、よしッ、来月迄にケガを絶対なおすよ!
そして8月のレースに出る!
それで優勝すると、スポンサーがついてイギリスに行けるんだ。」

「頑張って、裕也ならきっと大丈夫だから!」


それから、紗耶は夏休み中 裕也の家に通い
午前はホコテンでツイスト&ジルバ
コニー・フランシスになった気分で踊り!
午後は裕也と一緒にトレーニング!
まるで何かに取り付かれたように、裕也をサポートする。
裕也のために、ろくに作った事のない料理を作り
夜は素知らぬふりして、自宅で勉強!

そんな日々が続いた


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