CREAMSODA


テレビで見ていた紗耶から悲鳴にも似た声があがる。


紗耶は心臓の鼓動が高まり胸が苦しくなった。そしてそのままICUに運ばれてしまった。


矢沢裕也は即死だった。。


裕也の死を知らないまま、今度は紗耶の病魔との戦いが始まった。


そして意識が戻った紗耶に、叔母は辛い選択を告げる事になった。


「紗耶ちゃん、よく聞いて。今とても危険な状態なの、いますぐ赤ちゃんを取り出さないと、紗耶ちゃんの命が危ないの、わかる。
赤ちゃんはあきらめなさい!」

「叔母さん、私はどうなってもいいから、赤ちゃんだけは助けて
お願い!
裕也と決めたの
生まれてくる、赤ちゃん の名前(紗菜)を。
赤ちゃんだけは、助けて!」


紗耶の執拗なまでの叫びにも似た問い掛けに叔母は、絶対二人共助ける!
もう私の娘と孫なんだから。

そう決意した。


もちろん紗耶には、裕也の死は伝えてはいなかった!!


5時間にも及ぶ手術に、母胎もかなり衰弱していたが、その時 女の子の赤ちゃんが大きな産声をあげた。


「無事生まれたわ!」


叔母が紗耶に声をかけると、紗耶は疲れきった、表情の中に笑みをうかべたが、又眠りについた。


− 3日後の病室 −

綾美と伸二がお見舞いに来ているが、紗耶は眠りから覚めているものの、体調は戻らない状態だった。

「綾美!裕也は無事?」

「大丈夫だよ! 今鈴鹿の病院で治療受けているから。」


紗耶に悲しい想いをさせたくなくて綾美はウソをついた。


「赤ちゃんをここに連れてきて。お願い叔母さん!」


叔母が赤ちゃんを連れてくると紗耶は赤ちゃんを抱き抱えた。


「あなたの名前は紗菜よ。
お父さんは素晴らしいライダーなんだから。」


紗耶は紗菜の顔を撫でながら、愛らしい笑みを浮かべた。


「綾美・・・・・・これを・・・」


言葉がでないまま紗耶は、綾美にCREAMSODAの指輪を渡した。

そうあの裕也からの初めてのプレゼントの指輪を綾美に託した!


その後、紗耶は病魔に負けてしまい息を引き取った。

裕也の死をしらないまま。




< 25 / 39 >

この作品をシェア

pagetop