幕末異聞
――ザッ……ザッ…ザッ…
草の匂いが強くなる。
たくさんの人が草を踏んできた証拠だ。
「すみません、浪士組です。通してください」
総司は人だかりを掻き分けながら騒ぎの主を見つけようとした。
人だかりとは対照的に、鴨川は穏やかに流れている。
「…貴女」
総司は二重の大きな目をさらに大きく見開いた。
「…あんた!男やったんか?!」
人だかりは静まり返った。
一斉に二人の男女に注目する。
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