幕末異聞
弐章:女
とても日差しの強い朝だった。


いつものように浅い眠りから覚める。


すると道行く人々の視線が自分に痛いほど向けられていることに気がついた。
それに軽く人だかりも出来ていた。


(なんや?見せもんとちゃうぞコラ)


心の中でそんな文句を言いながら体を起こし、伸びをした。


「あんた、女の子やろ?そんなところで寝て大丈夫なん?」

通りかかった女の人が心配そうに尋ねてきた。

「ここのことか?案外平気なもんやで?それこそ住めば都や」

女は眠い目を擦りながらおどけて言った。


(ただ寝てただけやのに何でこんな心配されとるんや?)


まだ頭はうまく働かない。


しかし五感はしっかりと機能していた。

草の香りが強くなる。


自分の周りに集まった人だかりが明らかに狼狽し脅えていた。


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