蝶々遊び
「・・・誰?」
目の前に立っていたのは、赤茶色の髪と深い藍色の瞳の少年だった。
「俺?俺は緋影。」
「ひかげ?」
「そう。髪が赤茶だから、緋影。あんたは?」
「・・・麻朝」
「麻朝ね。了解了解。」
自分から聞いておいて、適当な返事をした目の前の少年に、少し腹が立った。
「緋影君は、この病院に入院してるの?」
「呼び捨てでいいよ。俺は入院してない。」
「・・・じゃあ緋影の家族の誰かが入院してるの?」
「うん。」
「だれ?お父さん?お母さん?」
「俺の姉ちゃん。」
「そっか・・・」
家族が入院してるというのに、緋影はあまり悲観していなかった。
彼の藍色の瞳は、まるで全てを知ってるような感じだった。
「・・・麻朝の眼も、俺と同じ色なんだ。」
「え?」
一瞬、心を読まれたのかと思った。どうやら私は、いつの間にか彼の瞳を見つめていたらしい。
彼の言うとおり、私の眼も深い藍色だけど、私のは彼のみたいに綺麗な色じゃない。
「・・・同じじゃないよ。緋影みたいにきれいな色じゃないもん。」
「なんで?綺麗だよ?何も知らそうでさ!その黒髪も綺麗だし!」
「・・・」
褒めるのか馬鹿にするのか、どっちかにしてほしい。