愛しい人へ
俺はさっそくその帽子をかぶった。
「良い男っ!」
梨絵は嬉しそうに俺の帽子を見上げる。
「もう帰るか。」
買った物は少ないけど、回った店の数は多かった。
おかげで足も疲れてきていた。
帰りの電車で梨絵はすぐに寝てしまった。
俺の肩に梨絵の頭が寄りかかる。
俺の手を握ったまま寝る梨絵。
忘れてしまいそうになるけど・・・
この手がすごく細かった頃があったんだ。
梨絵がなにもかも失ってた頃。
好きな人のためなら、なんでも捧げるあいつ・・・
梨絵の過去なんか関係ない
わかってても、考えるたび不安になる。
眠る梨絵の手をギュッと握った。