ディア フレンド

消せない痛み~閉ざされた過去~

長いジュシフとの戦いが終わり、あたしたちは地上に降りる。
有李栖はいきなり抱きついて来る。
その目には大粒の涙が溢れる。余程心配していたのだろう。
ゴメンね・・心配掛けて・・

ジュシフの顔は敗者の顔ではなく何処か
清々しい表情になる。
いつの間にかギーストもいた。いつから来てたの?

「杏南・・よかった・・・」


「負けたくなかったもん。
アタシが負けるわけないでしょ?」


有李栖の背中を擦りながら言う。
滅多に泣かない有李栖の涙。はじめて見た。
冷静な有李栖から想像が出来ない。
子供のように泣きじゃくっている。


「さて、杏南様。代償のほうを宣言して下さい。」

ギーストが言う。そうか、一応
代償を賭けてたんだっけ。アタシは聞きたかったことを
知りたかったことを宣言する。


「えっと・・みんなが言ってた―、
波留華って人のこと、知りたい。」


みんなの顔が曇る。アタシの顔を見るたびに
『波留華様』と言われるわけ、みんなが抱える黒い物。
全て知りたい。思い出せない訳、何かあるはずなのだ。


「―これは話さないといけなかったこと。
ギースト、別室で杏南に話してあげて・・・
私の部屋使っていい。夕食作ってるから・・・」


有李栖は淡々と言う。そして、表情を変えずに
アタシから視線を外す。。
そんなに明かしたくないことなのか・・
アタシ聞いていいのかな・・罪悪感でいっぱいになる。
ギーストはそんなアタシの心中を察したのか、


「では行きましょうか。」

アタシはギーストに促され、屋敷に向かう。
有李栖とジュシフは何も言わない。
そのとき、


「ギースト!」


急に有李栖がギーストの名前を呼ぶ。
アタシは咄嗟に振り向いてしまう。ギーストも立ち止まる。


「杏南に手、出したら・・息の根止めるから・・・」



「分かってますよ。」


有李栖はいつもの口調で言う。
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