finder

ベートーヴェンのドロップス


公園でバスケをしていると絵美がきた。

俺はバスケをやめて、二人で近くのベンチに腰掛けた。


「和真、あげる」


予想どおり、ドロップスの缶が差し出された。


「うわ、いらね」


中身はやっぱり全部、ハッカ。

そんなこと言いながらも俺は一粒口に入れた。

勝手に俺を枕にして寝だした絵美を見て、ため息をついた。




三年前、絵美はドロップスの缶を開けた。

事故から半年たって、ようやく。


絵美が俺の手のひらに最初のドロップを落とした。

それがハッカだった。


「貸してみ」


俺は絵美の手のひらにドロップを落とした。オレンジ色のドロップ。




あの日から事あるごとに絵美は俺にハッカのドロップをくれた。

俺、ハッカはそんなに好きでもないんだけどな……

絵美のほっぺたをつついた。


「有り難迷惑だよ、バカ」


本気は絵美から貰えるのが嬉しかったりする。

俺の特権だから。

口の中のドロップを噛み砕いて、もう一度缶を振った。

コロンでてきたのはオレンジ色のドロップ。

こういうサプライズがあるから憎めない。


絵美の幸せのドロップ、
俺にくれるから。


< 75 / 75 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

椿戦記
朝都/著

総文字数/21,894

その他32ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
いっそ 死んだほうが ましだろうか と思った それでも わたしは生きることを 選んだ 地獄の路を 這いずって進むことに なるとしても Special★Tahanks れなちゃん 名前提供ありがとー!!!
『僕らが今いる今日は』打ち合わせ
朝都/著

総文字数/2,721

その他13ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
直木サン×朝都 コラボ作品 打ち合わせ専用 * 2012.1.4/S
僕らが今いる今日は
朝都/著

総文字数/30,002

青春・友情35ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
走(ソウ)×真思(マコト) 青春ストーリー 一見穏やかな家族は 崩壊寸前 ややこしい友人関係は 煩わしい いろんなモノを背負い込んだ青春 十八歳、高校三年生 悩んで悩んで過ごして季節は 辛くて苦しくて だから 嬉しいことも 楽しいことも もっともっと多かった  * 直木翔人×朝都 コラボ作品 この作品は真思sideで進行します 直木翔人サマ作の走sideのストーリーと合わせてお楽しみください

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop