アンダンティーノ ―恋する旋律 (短編)
 テツロウはどんな思いで、この一年
を過ごしてきたのだろう?

 この世から永遠に旅立てないという
ことは、彼にとってそんな時間が
はてしなく続くということだ。

 テツロウの実家の近所でたずねても、
ショウコが住んでいたというマンション
の管理人に問い合わせても、彼女の行方
はまったくわからなかった。

 こうしている間にも、どんどん時計の
針は進んでいく。

 今ではテツロウばかりでなく、ユマ
自身も焦っていた。

「昼のコンサートでよかった。

 もし夜だったら、とんでもないタイム
 ロス――」

 時間を確認しようとして携帯を探して
いたユマは、動きを止めた。

 そうだ。

 携帯がある。

 ショウコに電話すればいいのだ。

 メールだっていい。

 本人の居場所がわからなくても、連絡
さえ取れればどうにかなる。
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