アンダンティーノ ―恋する旋律 (短編)
「あなた、もしかして――」

 縁なしのメガネ越しに、ユマを
見つめる瞳は優しそうだった。

 ハンサムで、その上、見れば見るほど
ハルキに似ている。

 それに眼鏡までかけているなんて反則だ。

 ただ顔立ちが似ているだけなら、
ここまで反応しないのに。

 ユマは唇をかみしめ、こっくりうなずく。

 見えるばかりか声だって聞こえる。

 二人の周りにはたくさんの人が歩いて
いたが、彼を認識できるのはおそらく
ユマだけだろう。

 なぜならその男は死者だったのだから。


*     *     *     *      


 ユマは幼いころから霊を見ることが
できた。

 もっとも常にというわけではなく、
お互いの波長がうまく合った場合に
限ってだけれど。

 だが一度も接触したことはなく、他の
人と同じように何も見えないふりをして
きた。




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