アンダンティーノ ―恋する旋律 (短編)
 コンタクトの方法がわからなかったし、
怖くて不用意に近づきたくはなかった。

 なにしろ彼らは死んでいるのだ。

「見えるんですね?」

 ユマは再びうなずく。

 それを見た男は笑顔になりかけてから、
眉をひそめた。

「失礼ですが……その……喋れますか?」

「え、ええ。ええ、もちろん!」

 思わず声が大きくなって、ユマは
あわてて口を閉じた。

 男の姿は彼女以外には見えないのだ。

 このまま喋り続けたら周囲から
怪しまれてしまう。

 ユマは目線で、奥の人気のない一角を
指し示す。

 男はうなずいて、うれしそうに笑って
みせた。

(やだ)
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