アンダンティーノ ―恋する旋律 (短編)
「そんなこと言われても私だって
 都合があるし、期末テストだって
 近いし」

「だってこうやってのんきにチェロを
 聴きに来てるでしょう?」

「あ……」

「それにさっき三日後の追加公演の
 チケットも買ってたじゃないですか?
 
 しかも二枚。

 それって余裕があるってこと
 でしょう?」

 恨みがましい視線と非難するような
口調がユマを怒らせた。
 
 彼女の行動を妙に詳しく知っている
ところも気に入らない。

「あなたに関係ないでしょ!」

「す、少しくらい助けてくれたって
 いいじゃないですか。

 困っているんだから」

「なら、他の人に頼めばいいじゃない」

 勢いでそう言い放ったものの、ユマは
たちまち後悔した。

 テツロウが唇をかみしめたと思ったら、
その瞳から大粒の涙がポロポロとこぼれ
落ちてきたのだった。
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