月夜の散歩
「…ゆう…な?…夕菜…夕菜…」


あたしは必死で夕菜の名を呼んだ


「……ひ…な…ごふっ…助け…っ…ひ…」


バチャバチャと水を打つ


手の力が弱まり力尽きた夕菜が流されながらゆっくりと沈んでゆく


白い小さな手が見えなくなった時あたしの身体はガクガクと震えていた


「助け…てっ…て言いながら…夕菜は…夕菜は…」


そっとあたしの肩を抱く冬夜の手の温かさに安堵する


気が付けば涙が頬を濡らしていた
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