時空奏者



【カローン♪カローン♪】


丁度いいタイミングでなる音。
ギィィという音を立て開かれる扉。


「失礼します」


しかし
カツカツという音が途中で途切れる。

…どうやらエレンたちが
どこにいるのか分からなかった様である。


「こっちこっち」


腕を横に伸ばし、
ひょいひょいと手招きをするロウ。


「失礼します、ロウ様。エレン様」


お辞儀をしたその声の持ち主は
色白で目が大きくて
しかも長い黒髪を持った美少女だった。


「あぁ、リン!コイツの事、頼むな」


「はい」


彼女から発せられた声は
とても可愛らしい声なのに


感情のない声だった。


しかしそんな事より
ハルカが気になったのは

エレンがコイツと言い、
指さす先にいたのが
…ハルカ自身だったと言う事だった。


「えっと……?」


―――話が全く掴めないんですが
どうしたらいいでしょうか、あたしは。


「中等部を指揮しています。
リンと申します。
この度、ハルカ様のお世話係に」


「っつーことだから」


ブチッとリンの自己紹介を切るエレン。


そんなエレンに腹を立てるわけでもなく
ただ次の言葉を探すリン。


今までの動作を見てハルカが思った事。


―――アンドロイドかな…?


ハルカのとっても失礼な

【リンさんアンドロイド疑惑】

ができあがったとき。


「ハルカ様。
ここからは自分がご説明いたします。
…どうぞこちらへ」


手を動かす仕草さえ
ブレがないリン。


―――でも、まだ彼女のほうが
話しやすいかもしれない…


ハルカがそんな淡い気持ちを胸に
立ち上がって
リンの手をとろうとしたその時だった。




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