Time is gone
 みんな不安なのかもしれない。明日が明後日が明明後日が。そこに保障なんて、誰もないのかもしれない。不安で不安でしょうがないのかもしれない。だからこそ、誰かのために生きようと、必死で自らを鼓舞しているのかもしれない。
 僕も、親父やお袋、じいちゃんやばあちゃんにとっての、希望なのかもしれない。だからこそ、みんな必死になって僕のことを……。
 誰も自分のためだけには生きられない。自分のためだけに生きるには、この世界は厳し過ぎる。だから僕は……。
 袋の中から、もう一つの箱を取り出した。四十八粒入りの風邪薬の箱。これを大量のアルコールと共に飲み干し、死のうと思っていた。
 死ぬことは恐くなかった。まったく恐くないと言えば嘘になるが、先も見えない人生を後何十年も生きていくことに比べれば、恐くなかった。
 それなのに、箱を持つ手が震えていた。再び大量の涙が溢れだした。アルコールが生への執着心へと変わり、僕の頬を濡らした。
 僕はたくさんの人に愛されていた。僕の求めていたものは、失った希望の光は、いつだって僕の周りにあった。僕はただ、それに気付けなかっただけなんだ。
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