Time is gone
「どいつもこいつもクソッ……。だから夏は嫌いなんだ! ……しょうがない、水風呂でも浴びるか」
 俺の住まいは、築三十年はくだらない木造ボロアパートだ。唯一の長所である日当たりのよさは、今の季節は裏目に出る。直射日光をまともに浴びた室内は、蒸し風呂、いや、加熱されたオーブントースターのように暑くなる。
 年々加速する地球温暖化、連日三十五度を超す猛暑日が続いていた。それに加えて突如として起こったエアコンの故障。それは正に、致命的だった。
 大家に頼めば無料で修理してもらえるが、人との接触を極力避けたい俺は、それすらも頼めずにいた。だからといって、自ら業者に頼み、修理費用を負担する気など毛頭なかった。昔はエアコンなどなかった、扇風機があれば十分だ、自らに言い聞かせてきたが、亜熱帯気候へと化した東京の暑さは、すでに根性ではどうにもならないレベルだった。
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