月光の庭



彼は瞳に光を映さなくなって、ぼんやりと呟く。



もう、なくなっちまったんだな、と。



 友人とふざけて刻んだあの落書きは、思い出にすらならなかった。


   
 消えてしまった。



 くらくらする頭で、お互い一緒に悪いことしてたよなあ、と考える。



 笑えてきそうなほど、懐かしい。





「タケル……! タケル!」





 暑さも手伝って、彼はうんざりした目で老婆を見た。




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