ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
「今から行かなきゃならないとこがある。用が済んだらすぐ戻る。それまで大人しく待ってろ。」


 そう言って、多恵の手から銃をそっと取り、元の場所にそれを収めた。


「誰があんたなんか! 待たないわよ、だから戻って来るな! バカ! エロオヤジ!」


 多恵が勢いを取り戻し、以前のように木戸を罵ったが、それは木戸の思惑どおりだった。


「それは本心か?」


 不意に木戸から思いもしなかったことを問われ、思わず多恵は口籠る。


 それも木戸の思惑どおりだったらしく、木戸はフッと笑みを浮かべ、


「答えなくていい。」


 そう言い残して颯爽と部屋を出て行った。


「何よ! 本心に決まってんじゃない! そんなこと突然聞くな! ばかぁぁぁ!」


 慌てて喚いてみたが、もう木戸の姿は見えない。


 届いたかどうかも分からない。


 多恵は悔しくて仕方なかった。


「エロオヤジ…」


 部屋に一人残された多恵は、小さく呟いた。


 憎みたいのに憎みきれない。


 多恵はそれがもどかしかった。




 憎むには、木戸は


 あまりにも優しすぎた…




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