ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
「いいわ。何であんたが、そんなにも私と『やりたい』のか、さっぱりわかんないけど、でも、そこまで言うなら…」


 全て言い終える前に、多恵の口は木戸に塞がれていた。


 キスから? 多恵は順序にも驚いたが、木戸のそれはとても優しくて…


 まるで割れ物に触れるようにそっと… 最初は浅く、そして次第に深くなってゆく。


 翻弄されそうになるのを、何とか耐え、そして…




「…っつ!」


 弾かれたように木戸が身を引いた。


 木戸の唇にじわりと血が滲む。


 多恵が噛み付いたのだ。


「今度こんなことしたら、その時は… 舌を噛み切ってやる。」


 今までに発したことのないほど低い声で、唸るように多恵が言った。


 それでも木戸は「もうしません。」とおどけて笑うのだった。


 木戸の状況に合わない態度に、多恵は若干拍子抜けするも、木戸を睨み付けることは怠らない。


 そんな多恵などお構いなしに、木戸は自分の腕時計に目をやった。


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