ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】


 大通りに面した場所に、それは堂々と誇らしげに存在した。


 これ、映画館だったのか。


 ご近所さんだから、この道はよく通るので、この建物の存在は知っていた。


 コンクリートの壁は元の色がわからない程くすみ、ブルーのようなグレーのような… 


 見るからに薄汚れた外観からは、いかにも如何わしい店であることを連想させた。


 駐車場も入り口も通りとは反対側にあり、出入りする客が人目に付きにくくなっている。


 その辺の配慮も憎いね。


 受付には、アクリル板の向こう側に、70近いであろう男。


 真っ白な髭に覆われた顔の上には、黒皮のハンチング、お洒落さんだな。


 ホームセンターで売っていそうな、タータンチェックのシャツもイカしてるぜ!?


「携帯見せて」


 俺が目の前に立つと、男はボソリと呟いた。


「は? 何で…」


 俺が訳がわからず問うと、男はアクリル板に中から貼り付けてあったチラシを『見ろ』と言わんばかりに指差す。


『モバイル会員様限定 ナイト上映!!』


 そのチラシにはショッキングピンクの文字で、デカデカとそう書かれてあった。


 ここの映画館は時々こうして臨時で感謝祭なるものを行うらしい。


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