ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
「何だ流れか… なら5千円。」


 面倒くさそうに男は言った。


「ぼったくりじゃねぇか!」


 思わず俺が声を荒げると、男は右手を差し出し、人差し指をクイクイッと折る。


 俺が素直に耳を寄せると、


「お客さん、運がいい。今日は無修正だよ。」


 そう囁いてニンマリ笑った。


 捜査官Kに会わなきゃなんないし、俺はサイフから札を抜き出し、しぶしぶアクリル板下部のトンネルの中へそれを滑らせた。


 愛しの樋口さんよ、さようなら…


 男は満足気にそれを受け取るが、なんか俺、『無修正』に釣られて法外な料金を甘んじて奉納したみたいになってねぇか? 別にいいけど。


 上映は0時50分から。


 早めに来て正解、ナイス!俺。






 1時きっかりに、ヤツは現れた。


 俺の席の斜め後ろに何者かが座る気配がし、『捜査官Kか?』と身構える。


 映画の展開もちょっと気になる、まだ何も始まってないから余計にね。


 二つの欲求の狭間で、葛藤に苛まれる思春期真っ盛りな感じ。


「用件を言え」


 数分後、その男が口を開いた。


 やっぱりか。


 低くて威圧感たっぷりなところが兄貴と似ている。


 てかこの声、聞き覚えがある。


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