ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】




 凄まじいまでの水しぶきを噴き上げ、俺たちはプールの底へと飲み込まれた。


 もういやです。


 必死に手足を動かして、水を掻き掻き、やっとのことで水上に顔を出す。


 バシャーっと音をたて、すぐに兄貴の顔も水面上に飛び出した。


 兄貴は何事もなかったかのように、優雅に泳いでプールサイドへ辿り着き、軽やかにプールから上がった。


 俺も、ふて腐れながらも、泳いでプールサイドへと向かう。


 残念なことに、助かった喜びよりも、兄貴のハチャメチャ行動への怒りの方が、何百倍も上回ってるし。


 差し出された兄貴の手を無視して、自力で這い上がった。


 プールサイドにだらしなく座り、ストッキングを力任せに引っ張って脱ぐと、その場に叩きつけるように投げ捨てた。


 全身水浸しで、とてつもなく寒い。


「行くぞ、皆人。車へ戻って着替えよう。俺のを貸してやる」


 兄貴の相変わらずの命令口調に、余計にイラついた。


「いやだね、兄貴の服なんか… 俺には小っちゃいし」


 俺が言い返すと、兄貴は駄々っ子を見るような目で俺を見て、『しょうがないやつだ』とでもいうように笑みをこぼすと、スッと立ち上がり、


「風邪をひきたくなかったら、言うとおりにしろ、皆人」


 見上げる俺の頭に手をやり、俺の前髪をくしゃりとした。




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