ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
 そしたら兄貴が、弾かれたように俺を振り返り、


「皆人、美百合に伝えてくれ。お前と出会えたことは、俺にとって奇跡だった。俺はお前に、最上級の幸せをたくさんもらった。お前に出会えた奇跡を… 俺は… 神に… 感謝する。」


 叫ぶように早口で言った。


「兄貴、何だよそれ? 意味わかんねーし。」


 あまりの驚きに呆然と兄貴を見詰め、俺はボソボソと呟いた。


「必ず伝えろ、わかったな?」


 殺し屋とチンピラに両脇を抱えられるようにして、ヤツラの車の方へ連れていかれながらも、兄貴は必死に俺を振り返って叫んだ。


「わかんねぇよ!」


 そんなどう考えても最期の言葉ととれるセリフ、みゆっちには絶対伝えてやらねぇし。


 伝えられるかよ、バカヤロー!


 尺取り少年の変わりに、今度は兄貴がトランクに押し込まれた。


 全員が乗り込むと、漆黒の外車は一旦バックし、ハンドルを切りながらタイヤを軋ませ急発進すると、俺のジャケットの袖が風圧で震えるほど横ギリギリを通過し、もの凄い勢いで走り去った。

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