ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
 その様子を、木戸は黙ってただ見詰めていた。


 目一杯罵ったつもりだったが、木戸が腹を立てる気配などなく、多恵はそれが不思議で仕方無かった。


「俺は… 『イイ男』か?」


 そう突っ込まれ、自分が混乱して木戸の事をうっかり誉めてしまっていたことに気づき、多恵はハッとして息を呑む。


 そして悔しそうに涙を浮かべ、その目を伏せた。


「悪かった、冗談だ。」


 予想外な謝罪の言葉に、多恵は再び視線を上げて木戸を見た。


 その時、多恵が目にしたのは、穏やかな笑みを浮かべた木戸だった。






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