空に叫ぶ愛
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「せんせーっ!」



放課後。若菜が水島先生に今日あったことを話したいらしいから保健室に来ている。


若菜から聞いた話。先生にはよく相談に乗ってもらっていたらしい。


だから、もう大丈夫だと伝えたいんだと。



「……でね?ぜーーんぶ、愛ちんのおかげとって!」



私は扉の柱に背中を預けて笑顔の若菜と先生を見る。


先生は若菜の言葉をしっかりうなずきながら、愛しそうに目を細めながら聞いている。


若菜も鈍いね…



「良かったね、原田ちゃん。良い友達に出逢えて…」



……友達。その言葉に反応する私。


先生の目線が私に向けられる。若菜も私に満面の笑みを向けている。


また友達との繋がりができるなんて。夢にも思わない。


先生は口パクで『ありがとう』と言う。私はそれに微笑みで返事をする。



「じゃあね!先生!」


「ん。さようなら。気をつけて帰りなさい」



先生の精一杯の優しさ。教師と一人の男との境界線ギリギリ。



「じゃ……」



私はそれだけ言うと保健室を出る。



「島田も、気をつけてな」



島田〝も〟ね。



「わかってるよ。先生も頑張れ…」



いろんな意味を込めて先生に言う。


頑張れ。先生。
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