幕末異聞―弐―

「組分けは、四国屋に向かう組に二十四人、池田屋に向かう組を十人にする。責任を持って四国屋には俺が行く」

「では、俺は池田屋だな」

鼻息を荒くして近藤は地図に視線を戻す。

「隊分けは後ほど行うが、説明は今する。
まず、俺と四国屋を目指す者は、四条通の別れ道を縄手通に沿って北上する」

土方は、再び筆を持ち、枡の縦線に縄手通と記した。

「そして、三条通に出た所で、三条大橋を渡り木屋町通に入る道筋だ」

縄手通と書かれた線から指を上に持っていき、また枡の一角に突き当たった。
そこから伸びる横線に三条通と記入し、今度は横一直線に指を動かす。そして、最後にぶつかる縦線に木屋町通と入れ、指を上に登らせ目的地周辺で止った。


「次に近藤局長率いる池田屋組だ」

土方は間髪入れず説明を始めた。自分がどちらに配属されるかわからない組長たちは、必死で頭の中に地図を叩き込み整理する。

「こっちは縄手通と四条通の分かれ道でそのまま四条通を進んでもらう」

町会所に戻った土方の指は、縄手通との交差部分を無視して直線に指を移動させる。

「四条大橋を越して、木屋町通も通過。次にぶち当たる河原町通を北上して三条小橋付近の池田屋に向かう」

四条通と交差している縦線に河原町通と書き入れ、指をその縦線の上に移動させる土方。どんどん指を上らせていき、先ほど三条通と書いた横線との交差点で停止し、三条通に移す。横に少し指を進めた所でまた指を止めてトントンと打った。そこが池田屋というつもりなのだろう。

「いいか?」

十人の組長は同時に首を縦に振った。


この直後、監察含めた三十四人の名が二組に分けられた。



< 169 / 349 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop