幕末異聞―弐―



――どしゃッ!!

「な……なんで追っかけてくんだよ!!?俺らはただ見てただけだろ!?」

薄暗い細い路地のまん中で四つん這いになって怒鳴る男。

「ただ見ていただけなら逃げる必要なんてないだろう?」

「壬生狼なんかに追っかけられたら誰だって逃げるさ!!何なんだよ一体?!」

怒鳴っている男の隣には仲間と思われる若者が声を裏返らせながら必死の形相で訴える。

「逃げるということは余計に怪しさを増す。お前たちは逃げることで自分たちを捕まえてくれと言っているようなものだ」

ヒステリックに叫ぶ男たちの耳には正当な意見を述べる冷徹な声が聞こえた。

「組長、連れて行きますか?」

「うむ」

組長と呼ばれた男の返事を聞くや否や、もう一人の新撰組隊士が懐から粗縄を取り出し、慣れた手つきで怪しい男二人を縛る。




――四月二十二日 放火犯と思われる人物二人を捕縛


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