猫になって君にキスをして

あ、やべ。

クツ忘れた。


って、いらねーか。

猫だもんな、オレ。


両手両足からじかに伝わるアスファルトの感触に少し戸惑うも、

数分後には慣れた。

オレの環境適応能力は大したものだ。


道路の隅で左、右、どっちへ行こうか迷っていると、

佐々木さん家のペコ……飼い猫が電柱の影からこっちをうかがっているのが見えた。


「にゃ……」


見てる。

ちょー見てる。

しかも背中の毛が若干立ってる。


ケンカなんてまっぴらだ。

戦い方など全く知らないのだ、猫の。

あわてたオレは、とりあえず左へ折れた。


風が吹く。

うすく濡れた鼻に触れる初秋の風は、ひんやりする。


なんかくすぐったいと思ったら、

長く伸びたヒゲが風に合わせて揺れているせいだった。



< 15 / 214 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop