猫になって君にキスをして



オレは……

紗希に何か優しいことのひとつでもしてやった事があっただろうか。


「……にゃ(紗希)」

「なんじゃ?」

「にゃにゃ(いや、爺さんじゃないから)」

「そうかそうか」


……分かるのか?


「ふぃかしまぁ、珍ふぃ猫だ」


……それはさっき聞いたぞ、爺さん。


「にゃっ」


オレは軽く爺さんにスリスリっとやった後、そのヒザから地面に飛び降りた。


爺さんのあったかい手の感触。

今さらだが、無性に紗希に会いたくなっていた。


少し歩いてから、後ろを振り返った。

爺さんがオレを見ている。


「ふぃかしまぁ、珍ふぃ猫だ」

「……にゃー」

(またな、爺さん)



オレは紗希に会いに行く。


会いに行くぞ!


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