猫になって君にキスをして

「はい、婆ちゃん、おつり550円」

「どうも、どうも」


空を舞っていた右手を店主に差し出した婆さん。

その手の平にチャリンとおつりがのった。


店主の手には、まだ大根が握られている。


「にゃ?」

(ん?)


良く見ると、店主が握っている大根には亀裂が走っていた。


「にゃ」


婆さんのビニール袋に目を移すと、そこには亀裂の無いキレイで太い大根が収まっていた。


「にゃにゃ」

(へえ~)


プロレスラー体型のこの店主、

心は女物エプロンにプリントされたヒマワリのような心の持ち主だったわけだ。


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