愛しいわがまま。


「凌ちゃんさえいなきゃ…
はるは私のだったのに」


ありさちゃんは私を睨み続ける。



「…"返す"って、遥は私のものでもありさちゃんのものでも」
「"別れさせる"って言ってるの」


対抗してみたけど、声まで怖くなってきた亜梨紗ちゃんには敵わなかった。



「はるは優しいから、凌ちゃんを振れなかっただけなんだよ」


「…?」

(話が読めない。)



私が首を捻っているのを見て、
ありさちゃんはクスッと笑った。


「知らなかった?
はるはね、これまで告白を断った事なんて一度もないの」


(……は?)



それは私を嘲笑うかのように。


「だから、貴方とも付き合った。
貴方に気持ちがあったわけじゃないの
誰でもよかった。」


"ただそれだけ"



「………」


頭がうまく回らない。

黙り込んだ私に亜梨紗ちゃんは



「分かったなら、
……早く消えてよ

お願いだから、私からはるを奪わないで」



苦しそうに、悲しそうに。

ありさちゃんはひどく顔を歪めて、それでも私から目を逸らさない。


「…………」


その強い表情に、なぜか私の胸は締め付けられていた。



< 54 / 92 >

この作品をシェア

pagetop